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2019/09/23 0:05

マグマの陥没孔ミラクルの現状などなど

モダンホライゾンでレンと6番が登場してから煮え湯を飲まされているミラクル使いの皆さん、生きてますか?
ほんの数か月には最大勢力を誇っていたミラクルというアーキタイプはほとんど見なくなり、もはや絶滅危惧種に指定されてもおかしくない様相を呈してきました。

そんなこんなで数週間ほど石鍛冶に浮気をしていた私だったのですが、パンドラの箱の中にだって最後には希望が残っていたように、ミラクルにも一つの希望が見えてきました。

それがこちらです。

https://www.mtggoldfish.com/deck/visual/2247629

(私はこのタイプのミラクルを「マグマの陥没孔ミラクル」などと勝手に呼称しております。)

さて、このマグマの陥没孔ミラクルですが、(2019/09/08, 執筆時点(2019/09/23)の約2週間前)にMOで8-0したデッキです。

なぜこのデッキが画期的なのでしょうか?本記事ではこのデッキの真髄を舐めてみたいと思います。

ミラクルの弱点

さて、マグマの陥没孔ミラクルの強さを知るためには、これまでの既存のミラクルの弱点を再履修する必要があります。

順にみて行きましょう。

1:マナベースの問題

ミラクルと言うデッキはマナベースが強固なデッキというイメージを持つ人も多いかと思います。

もちろん、それは間違っていません。基本土地を中心としたマナベースは相手の不毛の大地を最弱の土地に変化させますし、基本に帰れや血染めの月といったカードを苦にしません(だから、自分自身が使う)。

奇跡というデッキは「相手より土地が伸びる」ので「潜在的にディスアドバンテージを負う」デッキですから、マナベースの時点で相手のカード(=不毛の大地)を腐らせるということには非常に大きな意味があります。

一方で、この奇跡の基本土地を中心としたマナベースは「3色目のタッチ」と「ダブルシンボルのカード」を採用するうえでの大きな障害につながっています。

ダブルシンボルのカードに対する障害

特に、議会の採決/ゼンディカーの同盟者ギデオン/至高の評決といった白のダブルシンボルのカードに対する部分です。「瞬唱の魔導士+ブレインストーム」や「ジェイス/ナーセット/相殺」を達成するために、島を2枚要求する状況が多く呪文貫きなどを構えることを考えると、「色マナに不自由しない」かつ「平地を2枚用意する」というハードルがそれなりに高いからです。

(以前はこの問題に加えて、「平地を持ってこれるフェッチランドが溢れ返る岸辺4枚と乾燥台地1~2枚」という問題がありましたが、その点は虹色の眺望で解決しています)

3色目のタッチに対する障害
これは、赤マナをどうやって捻出するかということに帰結します。
ボルカニックアイランドによって赤マナを確保する場合は不毛の大地耐性を下げることになりますし、山から調達する場合は「溢れ返る岸辺からはサーチできない」「山を素で引いた時に弱い」といった部分になります。
特に既存の3色ミラクルにおける「メインボードに赤いカードが入っていないにも関わらずメインボードにおけるマナベースへの不毛の大地耐性の低下」という問題は深刻な問題でした。
かといって、「メインから入れることが出来る赤いカード」というのも削剥程度しかない上に、「サイドボードの赤いカードも紅蓮破や赤霊破の2種のみ」ということも往々にしてあったのです。
つまり、「3色目のタッチが有効にならないマッチアップがそれなりにある」にも関わらず、「マナベースへの強い不可」が発生しているというのが3色ミラクルの弱点でした。


と、ミラクルというデッキでは、「基本土地を中心としたマナベースを組んでいるにも関わらず3色目をタッチするとそのメリットが減衰する」「基本土地中心であるが故の色マナ捻出の苦労がある」というジレンマを抱えているということになります(いや、まぁ当たり前なんですけどね・・・)


2:PWに対する弱さ

さて、ミラクルと言うデッキの弱点をもう一つ上げると、着地したPWに弱いということです。
「クリーチャーによるPWへのプレッシャー」が(ほとんど)存在せず、「直接処理する方法が議会の採決程度」しかなく、「コントロールデッキという都合上、ロングゲームを想定するので、PWにアドバンテージを稼がれてしまう」という3重苦が存在するからです。

もちろん、ミラクルユーザーがただ指をくわえていたわけではありません。いくつかの対策が練られていきました。主なものをみて行きましょう

クリーチャーによる圧力を増やす
メインボードからは瞬唱を4枚採用し、サイドボードではヴェンディリオン三人衆を2枚とることによって対応する形です。(メンターでもつぶせますが、その場合はだいたい勝ってますので・・・)
ただ、ヴェンディリオンでの対処を想定する場合はメインボードでの弱さというのはのこったままになります。

直接除去する方法を増やす
約1年ぐらい前から増加してきていた手法で、「メインボードの議会の採決の枚数を増やす」というシンプルな手法です。

青いPWに対しての耐性を上げる
紅蓮破や赤霊破を採用する形になります

打ち消す
灯争大戦以降に増えてきた手法で、メインボードに呪文貫きを2枚採用することで、打ち消しを狙う方法です。

と、まぁこんな感じでしょうか。実際のところ、このような方法でこれまでは十分に対応することが出来ました。
しかしながら、上記の4つは以下の問題を含んでいます。

クリーチャーによる圧力を増やす
・クリーチャーを除去する性能があるPWには有効でない
・メインボードから積極的に採用されるPWに対しては難しい

直接除去する方法を増やす
・除去するまでに十分なアドバンテージを稼がれていたら厳しい。

青いPWに対しての耐性を上げる
・青くないPWに対しては難しい

打ち消す
・打ち消すことに失敗した場合は打ち消しが腐ってしまう。
・打ち消しを引き込む前に早期に着地されてしまう可能性がある。

などなど・・・。

要は、「クリーチャーを除去出来て」「簡単にアドバンテージが稼げて」「青くなくて」「早期着地ができる」PWに対しては弱いということになります。

ただ、そんな都合のいいPWがいるのでしょうか?

そう、残念ながら印刷されてしまったのです。

モダンホライズンで印刷された彼女は瞬く間にレガシー環境に跋扈し、死儀礼のシャーマンと同様に「多色化して、環境にある強いカードを順番に採用したデッキ」である「4Cレン」や、既存のRUGデルバーに粘り強さを追加する要のカードとなったのです。

彼女が登場する少し前から徐々に頭角を現してきていた赤単プリズンの影響もあり、ミラクルというデッキは徐々に環境から駆逐されていったのです。


弱点を解消する

さて、このように自らのアキレス腱を撃ち抜かれてしまったミラクルというデッキは、自身の弱点と本格的に向き合う必要に迫られました。
ミラクルが向き合い、解決しなければいけない課題は先に挙げたように、以下の2点です。
1:基本土地中心のマナベースであっても、色事故が起こらないようにする。
2:(可能ならメインから)PWに対する耐性をつける。


マグマの陥没孔ミラクルは弱点とどう向き合ったか?

ここからが、今回の結論になります。先に挙げた2つの課題に対して、マグマの陥没孔ミラクルはどのように向き合ったのでしょうか?
1:基本土地中心のマナベースであっても、色事故が起こらないようにする。
これはモダンホライズンで登場した「虹色の眺望」というカードによってかなりの改善が見込まれましたが、はっきり言って完全とは言えません。それなりに色事故も起こりますし、「山」というカードの採用自体にリスクが発生しています。
この点についてマグマの陥没孔ミラクルは素晴らしい回答を見つけてくれました。虹色の眺望と同じく「モダンホライズン」にて登場した「アーカムの天測儀」の採用です。

また、白いダブルシンボルのカードである「議会の採決」の採用枚数を1枚に抑えることでもマナベースへの負担を軽減しています。

2:(可能ならメインから)PWに対する耐性をつける。

ここがマグマの陥没孔ミラクルの肝でしょう。マグマの陥没孔は着地した後のPWに対する回答になりますし、クリーチャー除去としても機能するため、メインから入れることが出来るようになります。
5点というのも絶妙な数値で、環境に存在するほぼすべてのクリーチャーとPWを触ることが出来るようになります(PWで圏外になるカードは+から入った4マナカーン2種とM20の6マナチャンドラぐらいです)。


このマグマの陥没孔とアーカムの天測儀という2つのカードの組み合わせはミラクルと言うデッキの中で、

・マグマの陥没孔によるマナベースへの負荷はアーカムの天測儀が軽減してくれる

・マナベースへの負荷軽減のために議会の採決を減らしたことによるPW耐性の低下はマグマの陥没孔が補ってくれる

という好循環を生み出しています。この点がマグマの陥没孔ミラクルの肝でしょう。

マグマの陥没孔のベストプラクティス

TIPSのような感じで列挙します

・呪文貫きは不要→マグマの陥没孔によって最大のターゲットであるPWへの耐性が上がっているから

・全体除去は控えめに→マグマの陥没孔の採用によってクリーチャー除去の性能も上がっているから

・先触れや定業は不要→アーカムの天測儀がある程度の代替となっているから
(補足:先触れや定業の役割の一つが、マナスクリューの解決です。そして、マナスクリューの解決のためには単なるキャントリップでも、その役割はある程度は果たせます)

・サイドボードには赤いカードを積極的に入れる→アーカムの天測儀のおかげで赤マナの捻出が容易になったため

・白や赤の3マナ以下でダブルシンボルのカードは多くとらない→アーカムの天測儀があるといっても、やはりダブルシンボルの調達はリスクを伴うので、3マナ以下のダブルシンボルは避けた方が無難。

と、こんなところでしょうか。


では、今日はこれぐらいで。(ツイッタランド@mtgbokuoo)